M&A・事業承継の報酬・手数料について

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M&A・事業承継の報酬・手数料

 今回は中小企業のM&Aや事業承継を外部アドバイザーに依頼した場合の報酬・手数料について比較してみようと思います。この報酬・手数料に関しては、一般的にレーマン方式により決定しています。

 

 M&A・事業承継における成功報酬(レーマン方式)

 レーマン方式とは、元々はドイツの経営学者レーマンの学説を応用した成果配分方式を基にしたものでありますが、M&A取引においては、M&Aの成約時に、移動する資産の額をベースに一定の率をかけて手数料額を求める方式のことで、ほとんどの会社はこの方式により、報酬・手数料を決定しています。

 このレーマン方式自体は、顧客の立場からしても非常にフェアな手数料の決定の仕方となっていますが、中小企業のM&Aや事業承継において、このレーマン方式は実は非常に顧客から実態がわかりにくいものとなっています。なぜ実態がわかりにくいかと言うと、どこの会社も概ね移動する資産の額をベースに一定の率を乗じて手数料率を決定と同じなので、手数料率に差があるケースであればわかりやすいのですが、実は実態がわかりにくい原因は、このレーマン方式の計算式の基となる「移動する資産の額」の計算方法が大きく違うのです。

 

 それでは、大手仲介会社の比較を見てみましょう。

 一見すると、どちらも大して差がないように見えます。しかし、ここにはとてつもなく大きな差があります。両者の違いは、レーマン方式の計算の基礎となる「移動する資産の額」が、A社だと「譲渡企業の時価資産額」、B社だと「株式譲渡価格」となっています。

 

 では具体的に、株式譲渡金額5億円で、負債額が変化していくケースを見てみましょう。なお、ここで言う株式譲渡金額は、企業価値理論は置いておいて、実質的に時価純資産で100%譲渡した場合の金額と思ってください。(時価総資産=負債+時価純資産)

 大手仲介会社A社とB社の手数料では、こんなにも差が出てしまいます。同じ仲介会社なのに結構驚きではないでしょうか。

 価値評価などのファイナンス理論の詳細については別途記載することにしますが、基本的には、時価総資産というのは、「時価純資産(=株式価値)」に「負債を時価評価した金額(通常は簿価と同金額)」を足して算出されるわけですから、大手仲介会社A社の方が手数料が高く出るのは当たり前の話でしょう。

しかし、ここの部分は仲介業者によって、大きく異なっており、意外と盲点になりやすいかと思います。他にも企業価値をベースにしたレーマン方式なども考えられます。

 なお、ファイナンス理論を基にしても、簡単に言うと、「事業価値+非事業資産=企業価値」、「企業価値-有利子負債=株主価値」、であることを考えれば、「移動時価総資産=株主価値+有利子負債+事業負債」となり、移動時価総資産を基にしたレーマン方式を採用している仲介会社に関しては、相当程度高い手数料を取っている仲介会社ということになるでしょう。

 

 M&A・事業承継におけるその他の報酬・費用について

 M&A・事業承継において仲介会社に支払う報酬については、その他に着手金や月額報酬(リテーナーフィー)があります。これらに関しても、各仲介会社それぞれで異なっています。

 

【着手金】

 着手金は、M&Aや事業承継の初期段階の仲介契約を締結したタイミングで、仲介業者に支払うお金となります。弁護士における着手金と大体同じような概念と思ってもらっても大丈夫かと思います。
 この着手金については、有料・無料それぞれ仲介会社によってあるが、ここは仲介業者それぞれの考え方があるようです。しかしながら、この着手金について気を付けなければいけないポイントは、M&A・事業承継が成功したタイミングで支払う成功報酬とは別に支払わなければならない手数料なのか、それとも、M&A・事業承継の成功報酬の一部に充当される(最終の成功報酬のうちに含まれる)ものなのかは事前に確認しておいた方がいいでしょう。

 

【月額報酬(リテーナーフィー)】

 リテーナーフィーは着手金とは別に、M&A・事業承継の検討を行うために月額いくらという形の定額で支払う手数料になります。決め方の一つとしては、想定成功報酬の2%みたいな形で決定されますが、会社によっては1案件何十万という決められ方もしています。このリテーナーフィーに関しても、成功報酬に含まれるか、それとも成功報酬に充当されるべき手数料なのかは事前に確認しておいた方がいいでしょう。なお、相場としては、想定成功報酬の2%程度を目安としておけば良いでしょう。

 

 この着手金とリテーナーフィーについては、M&A案件が成立しなくても、仲介業者に支払わなければならない手数料になりますので、仲介業者を選ぶ際には事前に良く検討して置く必要があります。高い着手金は払ったけど、M&A案件が全然成立しない・・・なんてこともありえます。

 また、逆に、着手金、リテーナーフィーともに無料をうたっている業者もありますが、この場合はM&A案件が成立しない限りは仲介業者には1銭も入らないどころか、M&A案件を成立させるための労力(主に人件費等)だけ、仲介業者にとってはお金が出て行ってしまっています。このような業者については、強引にM&A案件を成立させて成功報酬を得ようとしていないかなど良く検討する必要があります。

 結論的には、良い仲介業者というのは、成功報酬と、着手金・リテーナーフィーのバランスが良く、さらに着手金・リテーナーフィーを成功報酬の一部に充当してくれる業者になるのではないかと思います。

 

【企業価値算定費用】

 企業価値の算定は、M&Aプロセスの中でも重要な作業の一つであり、株式譲渡金額にも直結する作業になります。この企業価値の算定は、M&A仲介会社やFinancial Advisorにとって腕の見せ所の一つですが、その分レベルにバラつきがあるのも事実です(もちろん考え方とかの違いもありますが。)。重要なプロセスの一つですので、支払う手数料にどの程度のレベルの企業価値評価が含まれているかについて確認する必要があります。

 もちろん、この企業価値評価については別報酬というM&A仲介業者もあります。不安な方は、別途企業価値算定を専門としている会社などに、セカンド・オピニオンを入手するというのも手かもしれません。規模にもよりますが、中小企業であれば50-150万程度が相場ではないでしょうか。

 

【デューデリジェンス費用】

 デューデリジェンスには、財務デューデリジェンス、税務デューデリジェンス、法務デューデリジェンスなどがありますが、大体の仲介会社ではこれらの費用は別になるケースが多いと思います。

 理由の一つとしては、財務・税務デューデリジェンスでは公認会計士・税理士が主役であり、法務デューデリジェンスでは弁護士が主役となりますので、公認会計士・税理士・弁護士を抱えていない仲介会社では、これらの作業を実施することができないという点が挙げられます。また、規模にもよりますが、これらデューデリジェンスの費用は着手金やリテーナーフィーで賄うことは採算がとれないということも関係しているかと思います。

 なお、中小企業のM&Aプロセスにおいて、このデューデリジェンスプロセスは別費用で時間もかかり、更には売却対象会社にも負担がかかると言うこともあり、このデューデリジェンス作業を実施しないケースも多く見受けられます。

 しかしながら、売買成立後のトラブルの元になるので、費用と時間をかけて実施した方がいいでしょう(詳細は別コラムで記載しようかと思います。)

 

【その他の費用】

 その他の費用としては、税務スキームやM&A・事業承継における税務処理などの税理士費用、契約書関連の弁護士費用などが考えられます。M&A・事業承継に関する税務・法務は、それぞれの分野の中でも特殊ですので、M&A・事業承継専門の税理士・弁護士に依頼することをお勧め致します。

 

 まとめ

 以上、M&A・事業承継において外部アドバイザーに依頼した場合にかかる報酬・手数料などについて見てきました。特に、M&A・事業承継が成立した場合に発生する成功報酬については、金額が大きいということもあり、事前に良く確認しておく必要があるでしょう。

 なお、レーマン方式を採用した成功報酬については、株式譲渡金額(取引金額)を基に計算するのがあるべき姿でしょう。「移動する資産」という点を拡大解釈し、「負債」部分からも成功報酬が計算される「移動時価総資産」方式は、負債に対して二重でコストを支払っているようなものです。不動産にしても、他の財にしても、移転した価値に対して報酬を支払っているという観点からすると、M&A・事業承継における成功報酬は、株式譲渡金額(時価純資産)を基に計算する考え方の方が理にかなっていると考えます。(もちろん、成功報酬を決めるのは各社の自由ですし、顧客にとってもそれ以上の付加価値を感じるのであれば特に問題はないことですが。)

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